読みもの

お金と住まい

そのスコアが高いのは、家ではなく、年7%という一行のほう

世帯年収2,200万、貯蓄と投資で3,500万、家賃は月28万。資産は積極的に運用していて、平均7%で回る想定でいます。この前提で物件を当てれば、たいていの試算は「余裕」に着地します。事前審査は通り、シミュレーターは高い点を返します。条件を眺めるほど、買わない理由のほうが見つからなくなっていきます。

ただ、その安心がどこから来ているのかを、本人は正確には掴んでいません。家計が強いから余裕なのか、物件が手頃だから余裕なのか、それとも——資産が毎年7%で増え続けるという、たった一行の前提が余裕を作っているのか。迷いが残るとすれば、それは答えにではなく、この出どころのほうにあります。

その点数は、家計の強さではなく、置いた前提の強気を採点している

年7%は、控えめな数字ではありません。世界株式の長期平均に近いと言えば近いのですが、それは「数十年ならしたら」の話であって、自分が運用する期間のどこを切り取っても7%が出る、という意味ではどこにもありません。にもかかわらず、この率を一度置いた瞬間、3,500万は時間とともに膨らみ続け、住宅費の重さを軽々と飲み込んでいきます。

だから試算が返す高い点は、家計が住宅費に耐える力を測っているのではありません。「7%で回り続ける運用」がどれだけ効くかを測っています。点の高さは、家の手頃さでも年収の厚みでもなく、置いた前提の強気をそのまま映した目盛りです。強気を一段だけ下げれば、世帯も家も年収も一字変えないまま、点は下がります。

固定されているのは返済額だけで、それを支える期待は毎年裏切られる

返済額は契約した日に固定されます。それを支える運用益は、毎年ばらつき、悪い年はマイナスになります。固定された支払いを、固定されていない期待で支える——この非対称が、リターンを当てにした住宅購入の正体です。平均7%という一本の線の見映えのよさは、その下にある振れ幅を語りません。

しかも運用が振るわない局面は、単独では来ません。株価が落ちる年は、賞与が薄い年、転職を迫られる年と重なりやすいものです。返済だけが約束どおり毎月やってくる中で、それを賄うはずの資産は減ります。平均7%の一本線の下には、こうした「悪い年が数年続く未来」が何百本も折り畳まれていて、固定費はその全部に同じ顔で請求してきます。

同じ人が、置いた前提ひとつで「余裕」と「不安」の両方を手にしている

年収も、貯蓄も、家賃も、買う物件も、一切動かしていません。動かしたのは「資産が年に何%で増えると想定するか」、ただ一つ。それだけで、安心ラインに届く年齢も、老後に残る余白も、まるで別の家計のように振れます。

高い点を見て安心している人と、同じ入力で控えめなリターンを置いて不安になっている人は、別人ではありません。同じ一人が、置いた前提ひとつで両方の結論を持っています。なら本当に確かめるべきは「いまの点が何点か」ではなく、「この点は、リターン前提のどのあたりに立っているのか」のほうです。

リターンの幅を入れる欄が、家計診断にもローン比較にも、そもそも無い

家計診断もローン試算も、利回りを一つの固定値として受け取り、その一本の線を将来へまっすぐ伸ばします。7%と入れれば7%で伸び、その前提の内側だけで「余裕」を返してきます。でも本人がいちばん知りたいのは、その7%が5%や3%だったとき余裕がどこまで目減りするのか——線が想定どおりに伸びなかった世界のほうです。

一本の線を延ばす道具は、線が裏切られた未来を構造上描けません。それは精度が足りないのではなく、利回りの幅を受け取る欄を最初から持っていないからです。「7%で回り続ける前提」で出した安心は、まさにその前提が外れる不安にだけは、設計上どうやってもこたえられません。点が高いほど、その点が何に賭けているのかは見えにくくなります。

スコアの綱引き

押し上げる

  • 年7%という強気な前提
  • 世帯2,200万の稼ぐ力
  • 3,500万と複利の時間

押し下げる

  • 年7%が外れる不確かさ
  • 固定費を支える期待の振れ幅

92という点が立っているのは、家計の床ではなく、年7%という一行の上

いまの前提のまま100歳までを1,000回試算すると、この世帯の余白スコアは92、資産が尽きずに済んだ未来は1,000回すべて、安心ラインに届くのは48歳ごろでした。点を押し上げているものを並べてみます。世帯2,200万という稼ぐ力。3,500万という助走の厚み。35歳前後という、複利にまだ十分使える時間の長さ。家賃28万は安くはありませんが、この稼ぐ力と貯蓄の前ではまだ余白を残します。どれも確かに効いています。ただ、これらを束ねて92まで引き上げている張本人は、年7%というたった一行です。3,500万を毎年7%で膨らませ続ける前提が、ほかのどの要因よりも強く点を持ち上げ、それとちょうど同じ強さで、その前提が外れる不確かさを点の下へ折り畳んでいます。いちばん太い押し上げの綱が、いちばん太い押し下げの綱でもあるわけです。その綱引きが釣り合った先に出てくる数字が、92になります。

だからこの人の論点は、92が高いか低いかではありません。その92が、リターン前提という一本の軸の、どのあたりに立っているのか——強気をひと目盛りだけ渋く取り直したとき、点がどこまで下がるのか、にあります。同じ綱引きは、これを読むあなたの数字でも回っています。いちばん太い綱が、年7%という一行です。

この世帯の余白(同じ前提で100年を1,000回試算)
余白スコア92 / 100
0余白が大きい100

資産が尽きずに済む割合

100%

安心ライン到達

48歳

YOHACK は、「リターンを強気に見た未来」と「控えめに見た未来」を自分の数字で並べ、安心ラインと余白がどれだけ動くかを見るための道具です。何も売りません。自分の数字で見てみる

同じ問いを抱えていそうな人が、まわりにいたら。

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